もっとくっついて

「ふふ。ふふふ。さっきよりもっとくっついたりして♪」

ペンちゃんはね、
ちっこい雪だるまさんだ〜〜い好き。
ねんね〜〜♪ねんね〜〜♪
ふふふふ。





こうして

涙も笑顔もいっぱいあった
生後10日の小さなペンちゃんのお忙しい一日が
ようやく終わったのでした。


「かわいいふたり、仲良くゆっくりおやすみ・・・」

もう一度 おねんね

「ありがとうね。ちっこい雪だるまさん・・・・」
さ。さ。もう一回、ねんねしましょう！
今日は疲れたもんねえ。ふふ。ふふふ・・・

また明日も
ペンちゃんと一緒にお遊びとか〜〜
おやつとか〜〜おしゃれとか〜〜

とにかく、一緒にね。ふふふ。

ねんね・・・ねんね・・・

聞こえたよ・・・

・・・・・・・・・








「・・・・・」











・・・・・・

ありがとう
ちっこい雪だるまさん・・・・

え？何て！！？

・・・・・・・


「・・・うん・・・」










「ありがとう
ずっと一緒にいようね。ペンちゃん。」









・・・・・・・・・

えっ！？

絶対にお守りするから

「・・・・・ちっこい雪だるまさん・・・・」

今日は・・・・ごめんね・・・

ペンちゃんは
ちっこい雪だるまさんとずっとずっと一緒にいられるように
いつももっと気を付けるからね。

絶対お守りするからね。
だから　ずっとペンちゃん家で一緒に暮らそうね・・・

涙が止まらなくて

うう・・・

「・・・・・・」







「・・・・・・」

忘れていってしまう

ずっと　ずっと
そういうところに行ってしまったら・・・

いつか　ペンちゃん家の子だったってこと・・・
忘れてしまうのかなあ・・・






ペンちゃんと毎日仲良しで
お幸せに暮らしてたこと・・・

ペンちゃんのことも

忘れてしまうのかなあ・・・

かわいがってもらえないかも

そこのお家では
もう、お着替えもなくて・・・
ずっとさらわれて来た日のままのかっこうで

おやつもおフトンもご用意してもらえないかも・・・






あんなにかわいい子なのに・・・
ペンちゃん家にいたときみたいに
かわいがってもらえないかも・・・

そういうお家ですごさなくてはいけなくなってしまっても

ちっこい雪だるまさんは
だまって・・・がまんしてすごさないといけないんやね・・・

もう・・・見つけることは

どこかの街につれていかれて
しらないどこかの家の子にされてしまったら

きっと
もう返してもらえないよね・・・

ポンと、本棚やお部屋の片隅に置かれてしまったら






ペンちゃんは
もう、見つけにいってあげられないよねえ・・・

もし・・・よそのどこかに・・・

むくっ

「・・・・・・・」

助けて が言えなくて

だから・・・

もし・・・本当に





こんな
こんな恐ろしいことがおこってしまったら




『ペンちゃん　助けて！』って
言えずに・・・

逃げることもできずに

そのまま　よそのお家に

・・・・・・・・・・・

まぎれるように じっと

「・・・・・・・・」







お買い物に出かける前・・・

ちっこい雪だるまさんと
いっぱい、おしゃれなショール選びをしとったのに

いつもちっこい雪だるまさんのことを
とってもとっても大事にしてるのに

とっても華やかにしとるのに・・・






なのに・・・

あの・・・
あのうしろ姿・・・
あの悲しいうしろ姿・・・

まるで
お荷物にまぎれるようにあんなところに
ひとりで　じっと・・・

この子は・・・ペンちゃんみたいに泣いてお母ちゃんを呼ぶことも
できないのに・・・

となりで おやすみ・・・

「・・・・おやすみ・・・」

ちっこい雪だるまさん・・・・

・・・・・・・・・・・・・

もちろんお揃え

「よいしょ。よいしょ。」

ペンちゃんももちろん、おんなじおフトンでね。

ペンちゃんがすぐおとなりにいるよってに
安心してゆっくりおねんねしてね。

ふう・・・フカフカして気持ちええよね・・・

大きめベッドの上に

「さ。ちっこい雪だるまさん、今日はここで・・・」
ペンちゃんもすぐおとなりでおねんねするからね・・・

ふたりならんでおねんねできる大きめベッドの上に
ちっこい雪だるまさんを寝かしつけるのでした。


・・・もちろん、今日もかわいいおフトンで、ね。
よく似合っとるよ・・・

大切にくるんで

その夜、ペンちゃんはちょびっとお早めにベッドルームへ。

なんだかあのわずかな行方不明時間に
ちっこい雪だるまさんがものすごく疲労したと思えるので

大事にくるんとやわらかいタオルでくるんで
ベッドまでだっこして行ったりして・・・

「遭難させてしもたようなもんやから・・・早くおねんねしてもらわないと・・・」
いつもはあんな冷たい床に座布団もなしに座ったままなんて・・・
ちっこい雪だるまさんにはあり得ないことなのに・・・

・・・こんなことをつぶやくペンちゃんなのであった・・・

あふれる気持ちが

「ごめんね。ごめんね・・・」

でも・・・
いてくれて
よかった・・・

よかった・・・

ペンちゃんを許してね・・・









いろんな想いが
いっぱいいっぱいあふれるペンちゃんのちいさなお背中を見て
お母ちゃんは何もお声をかけず
そっとお部屋を出たのでした。

忘れていたなんて

「うっ・・うっ・・・」

ごめんね。
ごめんしてね。
ちっこい雪だるまさん。

ペンちゃんがこんなところにちっこい雪だるまさんを
ひとり残したまま
忘れていたなんて・・・
忘れてしまっていたなんて・・・

ペンちゃんを許してね。

うっ、うっ・・・
さみしかったでしょう。
うっ、うっ・・・
本当にごめんね・・・

冷たい床に

「ちっこい雪だるまさん！こんな・・・」

こんなくらいお部屋に・・・

こんな冷たい床にひとりで・・・

うっ、うううう・・・

ペンちゃんが悪かった。

うう　うううう・・・・

駆け寄って

うっ・・・

うう・・・